プロローグ

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「え?お前が何?」  間髪入れずにロクでもない切り返しをかましてきた司(つかさ)を今は放置しておきたい。  校門から会場となる講堂の間。少し余分な広さを感じるこの大学の前庭は、あと30分ばかりで始まる入学式に出席する生徒でごった返していた。  その人混みの中で俺の視界に入ったのは… 「あれ?いねぇ…」 「だから何がよ」 「いた…!」  説明しようと司の方を向くと、自分が見た“ソレ”は司の後ろ―と言ってもかなり距離はあるが―に移動していた。  にしては移動が早すぎる…?同じようなのが2、3人いるのだろうか、大学側のサークル勧誘などの動きも今日は無いはずなのだが。  考えている暇は無い。今度は見失わないように司を置いて駆け出すほどの速さで“ソレ”に向かって歩を進める。  しかし、講堂に向かう一定の流れを持つ人混みに違う方向から挑んだ所で結果は見えている。  “ソレ”の居た付近に辿り着いた時、既に対象は無かった…いや、いなかった。か。 「何?キモいやん」  同じように人混みを抜けた司が後ろから声を掛けてきた。時間も無いと促す彼に従い、その沢山の人の列へと戻る。
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