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それから数日。
克季が秘書兼マネージャーとして落ち着いてきた頃。
海外から玲が戻って来た。
克季の事が気になったのか、空港からそのまま事務所に来たと言う。
ソファーに座って居る玲は、克季の行動を目で追っていた。
「大丈夫だ」
「そうか?」
「あぁ。よくやってくれている。様になってきただろう?」
そう言うと、肩をすくめる。
「克季が様になったなら、モデルとして復帰したらどうだ?」
思いもよらぬ言葉に俺は驚き、
「まさか考えてなかったのか?」
「…そういう訳じゃ…」
とは言ったものの、玲から言われるまで考えていなかった。
「そろそろいいんじゃないのか?もう何ヶ月になる?」
「そうだな…」
そう言った後、俺は唯斗を見る。
「唯斗か」
「うん。まぁーな」
唯斗が記憶を失った後、モデルの仕事は記憶が戻ってからと思っていた。
「お前がモデルとして復帰して現場に連れて行けば、記憶を取り戻すきっかけになるかも知れないだろう?」
確かにそうは思う。
一日中部屋の中に居ては、取り戻すきっかけも少ないのかも知れない。
「考えてみるよ」
少しだけ考える時間が欲しかった。
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