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優しく瞬の頭を撫でた後オデコとオデコをくっつけて、
「瞬。幼稚園に行こうよ」
「…いや…いかない」
幼稚園と口にすると瞬は嫌がる。
「拓巳も一緒に行くから」
そう言っても、瞬は返事をしてくれない。
園を見学に行った際に、瞬はボロボロと涙を零していた。
入園してから一週間くらいは経っているのだが、毎朝いつもこんな調子のやり取りがある。
瞬の背中をポンポンと叩いて落ち着かせ、行くと言うまで根気よく待った。
「どうかな?まだ駄目かな?」
そう聞くと、瞬は俺の顔を見る事なく腕に力を込めてくる。
瞬が幼稚園に行きたがらないのも判らなくはない。
門の前で親と離れるのは寂しいものがあった。
自分も幼稚園に通ってた頃、母親と離されて泣いていた記憶がうっすらとある。
「…たくみ」
「うん?」
「…おちごと?」
「うん。お仕事だよ」
そう言うと瞬は俺の胸に顔をスリスリした後、
「…あの…いく」
「幼稚園に行くの?」
「…あい」
「よし。じゃ、ご飯食べようね」
瞬を抱っこしたままキッチンに向かう。
「…おりる」
「降りるの?」
「…あい」
それを聞いた俺は瞬を下に降ろした。
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