混乱④

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唯斗の声に振り返ると、片付けをしながらあたふたとしている。 「唯斗」 「すみません…」 俺が手を貸そうと近付こうとした時、スッと克季が横に立っていた。 落ちた書類を拾い上げて、克季はそっと片付ける。 「す、すみません…」 「いえ」 唯斗の片付けを終えると、カップを洗うため給湯室に向かって行った。 「何か唯斗可愛いね」 「そうだな」 唯斗があたふたしている姿は、誰も見た事がない。 記憶を失う前は、規則正しく落ち着いて行動していたからだ。 「なぎ」 「何だい?」 「おりる」 「降りるの?」 「あい」 薙に降ろされた瞬は、そのまま唯斗に向かって行く。 「ゆいと」 「はい」 瞬は何をする訳ではなく、ただ唯斗の傍に寄り添う。 そんな光景を、俺は微笑ましく見ていた。 「社長」 「うん?」 「終わりました」 「ご苦労様」 給湯室から出て来た克季に、薙はニコニコしながら、 「克季も一緒に行こうよ」 「いえ。パスします」 「つまんない」 そんな事はお構いなしに、克季は帰る準備を始める。 「社長」 「あぁ。終わっていいぞ」 そう言うと、克季は挨拶をして帰って行った。
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