混乱④

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唯斗が仕事に戻ってしまったために、瞬は寂しい思いをしているのだろう。 「瞬は唯斗に抱っこしてもらうの好きだもんな」 そう言って頭を撫でると、瞬は唯斗の胸に顔を隠しながら、 「ゆいと、だっこ、しゅき」 甘える仕草をした後、俺の顔を見る。 「だっこ、だめ?」 「抱っこしてもらっていいんだよ」 俺と瞬のやり取りを見ていた薙は、 「瞬。ごめん。甘えん坊なんて言って…」 その言葉に振り返った瞬は、ジーッと薙の顔を見ていた。 「なぎ」 「何だい?」 「ゆいと、だっこ、いい?」 「えっ?」 どうやら瞬は、甘えん坊の方ではなく抱っこしてもらっては駄目なのかと思っている様子。 「抱っこしてもらっていいよ」 薙がそう言うと、瞬はようやく笑顔を見せた。 それから少し休んだ後、俺達は事務所を出る。 外に出た所で、 「お前ら、あんまり呑み過ぎるなよ」 「えっ?何で判ったの?」 「何となくな」 「大丈夫だよ。明日も仕事だし」 「そっすよ」 そう言われ、薙と祥とは事務所前で別れた。 「よし。俺達も家に帰ろう」 「…はい」 「おうち、かえる」 俺は二人を連れて、駐車場へと歩き出した。
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