混乱④

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「瞬君。床に座って居ては汚れてしまいますよ」 「よごれる?」 そう言われた瞬は、体をよじって確かめる。 そんな瞬に、 「瞬。椅子に座ったら?」 「いしゅ、しゅわる」 俺が椅子とテーブルを持って行くと、瞬は嬉しそうに笑う。 唯斗のデスクの横にセットしてやると、 「たくみ、あーがとう」 「どう致しまして。瞬は何するの?絵本?」 「おえかき」 「お絵描きか」 「あい」 落書き帳を取って来てやると、椅子に座って飛び跳ねた。 遊びだしたのを確認して、俺はソファーに戻る。 「相変わらず唯斗にベッタリなんだな」 「あぁ。何も変わっちゃいない」 それから玲とたわいもない話をした後、 「それじゃ、俺はそろそろ行ってみるよ」 「そうか。暫くは居るんだろう?」 「あぁ。こっちでの仕事があるから暫くは居る」 「判った」 ドアの前で会話をしていると、いつの間にか瞬が近付いていた。 「チビちゃん、またな」 「かえる?」 「あぁ。帰るよ」 寂しそうな顔をした瞬の頭を、玲はクシャクシャとする。 「じゃ」 「あぁ」 「あっそうだ。モデルの件考えておけよ」 そう言って、玲は帰って行った。
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