始まり

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「よし。行こうね」 「…あの…」 「うん?なーに?」 瞬は俺に抱き付いたまま、 「…あの、あの、くましゃん」 「クマさん?」 「…くましゃん、いっしょ、いく…」 「いいよ。でも、クマさんは幼稚園までね」 そう言うと、コクっと頷いて見せた。 「よし」 瞬に幼稚園バックを肩から下げてやる。 「そろそろ行こうね」 「…あ、あい」 クマのぬいぐるみを抱いた瞬は、俺の後ろをついて来た。 「靴履けるか?」 幼稚園に入ってから、一人で何でも出来るようにと、出来るだけ瞬にやらせている。 一生懸命履こうとするが、なかなか履く事が出来なかった。 「…できない」 「出来ないか。じゃ、いっぱい練習しようね」 そう言いながら、俺は瞬に靴を履かせた。 ようやく外に出て幼稚園に向かう。 事務所に向かう途中に幼稚園があるため、通い慣れた道を手を繋いで歩き出した。 幼稚園が近付くに連れて、瞬の足取りが重くなるのが判る。 「瞬」 「…あい」 「瞬がお弁当食べ終わったら迎えに来るから。それまで頑張ろうね」 そう言うと、瞬は返事の代わりに手をギュッと握ってきた。 暫く歩いて、ようやく幼稚園の門が見えてきた。
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