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門の前に来ると、園児を迎えるため先生が立っていた。
俺達の姿を見た先生は、
「瞬君。おはよう」
すると瞬は俺の後ろに隠れる。
瞬が通っている園の先生の中に男性はいない。
そんな事もあって、瞬は先生さえも怖がっていた。
女性を怖がるのは無理もない。
本当は男性の先生がいる園にしたかったのだが、そう簡単には見つからなかった。
幼稚園に通いながら、少しでも瞬のトラウマが消えてくれたらと思っている。
そう思っていたのだが、
「瞬。先生にご挨拶は?」
そう言うと瞬は小さな声で、
「…はーようごじゃ…い…しゅ」
「はい。おはようございます」
挨拶した後、俺の後ろに隠れている瞬を前に出した。
「瞬君。みんなと遊びましょうね」
先生が手を差し出したのだが、瞬はその手を取ろうとしない。
「瞬。幼稚園で頑張れる?」
「…たくみ」
「うん?」
「たくみ、いっしょ、いる?」
「拓巳は一緒に居れないんだよ。お仕事に行かなくちゃ」
「おちごと?」
「お仕事しないと怒られちゃう」
すると俺の両手をギュギュッと握って、
「しゅん、おりこうしゃん、しゅる」
そう言って、俺の手を離した。
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