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だんだんと
異常な世界から戻ってきた僕は
薄暗い建物のほうに振り向いた。
早く行って
「大丈夫ですか?」と声を掛けて
警察に電話をして話をしないと。
アイツらの
やったことを咎めないと。
分かっているのに
体がそこから一歩も動かない。
動けなかった。
あんな目に合った彼女に
何て声を掛ければいい?
携帯を盗られて何も出来ずに
外で見張りをしていた僕に
何がしてあげられる?
助けを呼びにも行かずに
誰かが気付くのを待っていた
他力本願な僕に一体何が出来る。
彼女はきっと、いや絶対に
僕の顔など見たくもないだろう。
彼女にとって僕は
あの男たちと同じだ。
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