プロローグ

11/16
前へ
/39ページ
次へ
「金が手に入れば、水道代払って、家賃も払って…」 だが、行の金の使い道は他の悪人と異なる部分がある。 まず、盗んだ金は“生活費”という形になり、それで贅沢しようとは、全く考えていなかったのだ。 その上、行は必要最低限の金だけを盗むだけで、それ以上は盗もうと考えていない。 …この男、 泥棒を犯そうとしているのに、根はそれほど悪くないらしい。 ――でも、それ以前にだ。 行のこの状況に、最もな弱点が押し付けられた。 行は泥棒として家に侵入するのは初めて。 他人の家の入り方を知るハズがない。 言わば、どうやってこの家に入るのか分からないのである。 立ち止まる。 衝動的に決断したワケで、そこまで精密な計算などしてもいない。
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加