プロローグ

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流石の行でも、玄関から入ろうとはしなかった。テレビで見たことのある泥棒真似て、息を潜め窓や裏口が開いていないかと探りだした。 からくさ模様の風呂敷が欲しいくらい、その姿は様になっている。 だが。いくら泥棒デビューの行が頑張ったところで、そう簡単と無用心に家は開いてなどいない。 留守な挙げ句、簡単に開いていては、ルパン三世もびっくりするだろう。 そんなことは気にもせず、手当たり次第とドアに手をかけてゆく。 「お、ここ開いてる」 ある1つのドアが、パカリと押すことが出来た。 あり得ないほどの偶然は、行の声をご機嫌にさせ、それはまるで、箱からケーキを取り出した女の子のようである。 内心、行は驚いた。 行が手に掛けて開けた入り口は勝手口。ここは何ら一般の家と変わらなく、真正面からみた洒落た雰囲気とは真逆だったからだ。 その一般の家と変わりないドアを見れば、完全に鍵を閉め忘れたという方が正しいと思える。 せっかちな家だな、と行は言った。
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