12人が本棚に入れています
本棚に追加
【2・空は紅く】
弁当を置いた場所に、未來は戻された。そして、目の前の青年――空紅を一瞥する。彼はへらへらと笑い何事もなかったかのように、平然としていた。
「あんた何なのよ!?」
「命神〈イノチノカミ〉の空紅……あ、紅でいいですよ。てか、さっきから、何回も言っているじゃないですか」
「そうじゃないっ! そのイノチノカミってなんなのよ」
どうやら、空紅は人を苛立たせる天才らしい。未來は半ば叫ぶようにそう言った。そんな彼女に対して、空紅は笑みを絶やさず、まあまあと彼女をなだめ徐に口を開く。
「命神〈イノチノカミ〉とは? ですね。ええと……少し長くなりますよ?」
それでもいいと未來は頷いて、空紅を真っすぐ見つめた。彼は微笑み彼女の問いに答え始める。
命神〈イノチノカミ〉とは、その名の通り「命」を司る神だ。生をこの世に受けた瞬間から、決まった宿命を自らの記憶に記録し、死せる時は記憶に刻んだ宿命を死神に渡し、自身が記録した者につくのをやめる。そして、この世に未練を残し死んだ魂を死神にするのも彼らの役目でもあった。
空紅は今、佐藤未來につく命神〈イノチノカミ〉だった。しかし、彼女の「死」は今ではない。だから止めた――とのことだった。
最初のコメントを投稿しよう!