恋愛とはなにか。私は言う。それは非常に恥ずかしいものである。

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沈黙。 遙からこれを作るのは珍しい。 お前ちょっと黙れと言いたくなる程に、いつも遙は明るく口を開いていたから。 「……これでもさ。すっごい嬉しいんだよ。もう死んで、千尋ちゃんと話せないのが悲しかった。だから、幽霊でも何でも、千尋ちゃんとまた話せて、あたしはすっごい嬉しい」 「…………」 どこか寂しげな遥の口調。 何も言わない。何も言えない。 だから生まれる、沈黙。 「覚えてる?幼馴染歴が十七年で終了した日」 覚えてる。覚えてるに決まってる。忘れるわけがない。 暑い日だった。陽が眩しい日だった。蝉が五月蝿い日だった。 暑いのにあいつは屋上にいて。暑いから俺とあいつ以外には誰もいなくて。暑さに苛立ってて。だけど――
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