人生は夢である。死がそれを覚まさせてくれる。

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なら話を振るな、と思ったが、その様子じゃどうせ後で言うだろう、と俺は判断して、じゃあ後で。と電話に向けて言った。 あいつも、じゃーね、と言いかけて、そして言葉が途切れる。 ん?と。何かに気付いたような声で。 「――はへ?」 破裂音。破壊音。破滅音。 電話の向こうに、破滅が聞こえた。……崩壊が、聞こえた。 ストレートに結果と原因を伝えると、交通事故。電話をしながらのわき見運転。 トラックでンな責任感のねぇことするんじゃねぇと叫びたかったが、それはもう後の祭。トラックはバス停に突っ込み、そこに並んでいた数人は撥ね飛ばされた。 いや、撥ね飛ばされた――なんて生易しいものじゃなかったらしい。 根刮ぎ薙ぎ払った。限り無く蹂躙した。 表現する言葉が見付からない。表現する言葉が存在しないのかもしれない。 テロルや何かを彷彿とさせるそれは―― 違う。 それは間違いなく暴力(テロル)だ。 比喩するまでもない、間違うことなき、圧倒的なまでの暴力。 十二時間近い手術。結果。失敗。 手術は失敗し、俺の恋人は、命を落とした。
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