充実した一時間は忘却と不注意の数世紀より価値がある。

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そんでもっての事後レポート。 大方の予想通り、あれから遙からの電話が来ることはなかった。 迷惑承知でこっちから電話したが、あの番号は誰にも回ってないらしく、ゲンザイツカワレテオリマセンというあのお約束のアナウンスが流れた。 あと、これは非常にどうでもいいことかも知れないが、後から知った遙と携帯電話のこと。 ボンネットに叩きつけられ、アスファルトに叩きつけられ、身体中の骨を折って内蔵を損傷して、何故まだ生きているのかと問われる程の状態だった遙。 しかし、しかし遙は、それでも携帯を手放さなかったらしい。 勿論手術の時は手から離されたが、確固たる意思で、強い意思で、遙は携帯電話を握り締めていた。 直前まで俺と話していた、携帯電話を。 これをどう取るかは、各々の想像力に任せるとする。 そして一年。遙の二周忌。
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