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「ニーチェ、ニーチェ、こっちよ、早く」
柔らかな木洩れ日に、蜂蜜色の髪がふわりとなびいた。目に優しい、新緑の木立に二人、紛れ込む。
「そう急かさないで下さい、アリス」
少女の年の頃は十二、三か。
「ニーチェ、見て、子猫」
「猫」
「猫」
屈み込んだ少女の足元に、小さなプラスチックケースがあった。中には更に小さな二匹の子猫が。
「成る程、猫ですね」
「ニーチェ、この子、飼っていい」
「……」
「だめ」
「…構いませんよ、アリス」
「…っ、ありがとう、ニーチェ」
ぎゅっと腰に抱きつく少女、その頭に手を乗せると、目を閉じる。…いずれはこの子も。
「じゃあ、黒い子があたしので、グレーの子がニーチェのね」
「は」
「決まりね」
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