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僕の母さんはいわゆる専業主婦で、滅多に家に帰らない父親の分まで
大事に大事に僕を育ててくれた。
僕が小学五年生の時この世を去った母さんは、最後まで優しくて
母さんに病気が見つかってからも、全く家庭を顧みなかった父親を責める事なく安らかに眠った。
その時、僕は思ったんだ。
ーーお母さん、狡いよ。ーー
僕は既に、人として
どこか欠落していたんだと思う。
まるで今日母さんが死ぬ事を予期していたかのように、父親は珍しく姿を現して
それから全く口を開く事なくわらっていた。
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