惚れてしまいました。

11/11
前へ
/117ページ
次へ
「イヤ!!」 彼女の叫び声と共に爪先に鈍い痛みがはしる。 「っ!?」 腕の力が緩んだ瞬間彼女は走ってどこかへ行ってしまった。 「…花……咲………」 同じ言葉をもう一度呟くも状況は変わることはなく、伸ばした手がひどく虚しい…。 「ハハッ…何やってんだ…俺。」 もう、笑うしかないと思いながらも頬には生暖かいものが伝う。 いつから自分は涙を流していたのだろうか? 彼女を眺めていた時、あるいはこの手に彼女の華奢な体を閉じこめた瞬間、もしくは彼女が自分の腕の中からスルリと抜け出した瞬間。 いずれにしても悲しさと虚しさが込み上げてくるばかり。 踏まれた爪先よりも胸がチリチリと焼けるように痛む。 何だろう…この気持ち。 あぁ、そうか… それは、その答えは、ストンと自分の中に落ちてきた。 笹本藤は花咲蓮華に惚れてしまいました。
/117ページ

最初のコメントを投稿しよう!

98人が本棚に入れています
本棚に追加