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「イヤ!!」
彼女の叫び声と共に爪先に鈍い痛みがはしる。
「っ!?」
腕の力が緩んだ瞬間彼女は走ってどこかへ行ってしまった。
「…花……咲………」
同じ言葉をもう一度呟くも状況は変わることはなく、伸ばした手がひどく虚しい…。
「ハハッ…何やってんだ…俺。」
もう、笑うしかないと思いながらも頬には生暖かいものが伝う。
いつから自分は涙を流していたのだろうか?
彼女を眺めていた時、あるいはこの手に彼女の華奢な体を閉じこめた瞬間、もしくは彼女が自分の腕の中からスルリと抜け出した瞬間。
いずれにしても悲しさと虚しさが込み上げてくるばかり。
踏まれた爪先よりも胸がチリチリと焼けるように痛む。
何だろう…この気持ち。
あぁ、そうか…
それは、その答えは、ストンと自分の中に落ちてきた。
笹本藤は花咲蓮華に惚れてしまいました。
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