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そして、十分間の至福の時間は、あっという間に終わってしまった。
「じゃあ、第二回戦といきましょうか」
俺は嫌だと言いたいが、しかし、あの幸せを味わってしまった以上、決して言えない。
まぁそんなこともあり、俺は流れるがままに箸を引いた。
なんのイタズラか、その箸には【壱】とかっこよくかかれていた。
まぁ仕方ないよね。
外れる確率は50%だしね。
二回連続外れる確率は25%だけど……
「じゃあ、王様からの命令は、次にもう一度私が王様になったら、君は私の言うことをなんでも十回聞きなさい」
え?
そんなのでいいんですか?
「いいですよ」
まぁ俺に拒否権はないんだけど、一応返事はしないとね。
しかしこの勝負……
勝った!!
なにせ、三回連続で【王様】を引く可能性は、僅か12.5%。
これに対して【壱】を引く可能性は87.5%。
勝てないわけがない。
「じゃあ、次いきましょうか」
フフフ……
俺が【王様】になったら会長にあんなことやこんなことを命令してやるぜ!
「……………………」
なんで?
「はい、私がまた【王様】ね。じゃあ、夕緋君は私の願いを十回叶えてね」
あっ……
外れる確率も当たる確率も50%でかわんないじゃん……
馬鹿だ……俺。
しかも俺は最大のミスを犯していた。
今日、俺が人生最大とも言える《厄日》だということを――
「あの~会長」
「何かしら夕緋君」
「料理のお勉強をそろそろ……」
このまま王様ゲーム(という名の魔王ゲーム)をやってたら、『私の専属パシリになりなさい』とでも言われそうで恐い。
「そうね。お願いを使おうと思ったけど、夕緋君から言ってくれてよかったわ。一回分得しちゃったわね」
一回分損しちゃった!?
「じゃあ行きましょうか」
あぁ……
何故か会長のその言葉が『逝きましょうか』と、漢字変換されて聞こえる……
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