†第四報告書†

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  そんなわけで、俺は会長と一緒に、会長の別荘の厨房に着いた。 「大きいですね……」 大きかった。 圧巻だった。 つかデカすぎじゃね? 絶対こんなにいらなくね? こんなにデカイもんつくるなら、俺に金くれよ。 と、ケチを付けたくなるほどデカかった。 「まぁね。それじゃあ、材料はそこの冷蔵庫になんでも入ってるから、夕緋君おいしいもの作ってちょうだい」 「会長が作るんですよ!」 と、軽いツッコミを入れつつ、冷蔵庫を開け、卵を一つ取った。 「何ですか……コレ?」 あれ? 確かに俺は会長に卵を渡して、卵焼きを作らせたよな? えーと。 ちょっと頭を整理させてくれ。 まず会長に卵を渡した。 会長は綺麗に卵を割った。 ボールに入れた。 箸で掻き混ぜた。 フライパンを熱した。 油をひいた。 温まった。 フライパンに掻き混ぜた卵を入れた。 焼いた。 うん。 手順はあってるな。 で、何コレ? 何この銀の皿にのった真っ黒い物質は。 何この異臭を放つ物質は。 何この銀の皿をジュ~と音をたてながら溶かす物質は。 ダークマターですか? 暗黒物質ですか? 家庭で手頃に作れちゃったダークマターですか? 「卵焼きよ」 「会長。人類はそれを卵焼きなどと呼びません」 人類はそれを兵器と呼びます。 「いい、夕緋君? 卵を一度焼けば、たとえどんな状態であろうと、それは卵焼きと言うのよ」 「そんなどこかで聞いたことがあるような言い訳はいりません。会長、貴方はおいしい料理が作りたいから、俺に頼ったんですよね?」 「はい……」 しゅんとしてしまう会長。 なんか可愛い。 「ならくだらない言い訳はしないで下さい。じゃあ、もう一度卵焼きを作って下さい。出来るまでです」 「はい……」 そんなわけで、なんかSの良さに気付きはじめた俺は、会長へのスパルタ指導が始まった――  
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