1495人が本棚に入れています
本棚に追加
/100ページ
「泣かないで下さいよ、会長。ほら、まだ素材は残ってるんで、最後まで頑張りましょう?」
「でも……私また……」
「大丈夫です。俺が付いてますから」
「……うん」
そして、俺達は料理作りを再開した――
†
「う、美味い……」
料理作りを再開してから、二十数分後、奇跡が起きた。
俺はあの後、おふくろの味No.1にランクインした【肉じゃが】を、会長に教えた。
すると、あの会長が!
あの会長が!
あ、大事だから二回言ってみた。
一度も失敗することなく!
一度も焦がすことなく!
【肉じゃが】を完成させた。
しかも!
「俺が作るやつより美味い」
まるでプロの料理人が作ったみたいだ……
「本当に……?」
「本当です! この肉じゃが目茶苦茶おいしいです!」
「やったーっ!!」
そう叫んで、会長は目を輝かせ、涙を零しながら抱き着いてきた。
「かっ、会長?」
会長が抱き着いてきたことで、自分の顔が急激に赤くなってきたのがわかった。
「ありがとう夕緋君っ !君のおかげよ! 本当にありがとうっ!」
会長の顔は、本当に嬉しそうだ。
そういえば、俺も初めて料理を作った時は、本当にうれしかったな……
「いいえ、作ったのは会長なんですから、俺なんかに御礼なんて言わないで下さい。俺は作り方を教えただけ。ここまで作ったのは会長です」
俺がそう言うと、会長は首を横に振った。
「いいえ、君のおかげよ夕緋君。私、夕緋君がいたから頑張れたの。教えてくれる人が夕緋君じゃなかったら私……途中で諦めてたもの」
俺だったから……ね。
まぁこんな俺が会長の役にたてたんだからいいか。
「ねぇ夕緋君」
「なんですか?」
「I LOVE YOU」
会長は、笑顔でそう言った。
最初はドキッとしたが、会長には思いを寄せている人がいる。
きっと会長の冗談だ。
「ありがとうございます」
俺は笑顔でそう言った。
†
最初のコメントを投稿しよう!