本当のこと

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「朝奈さんには松本くんがいるでしょ!?だったら洋司くんを返して!」 「なに……言ってんの……」 元を辿れば、あなたが要と……! 要をあたしから奪っておいて、今度は相沢くんをとらないで、なんて。勝手すぎる。 「その要をあたしからとったのは誰だと思ってるの!?」 頭が痛い。熱くてクラクラする。 早く保健室に行けばよかった。 ううん、やっぱり学校なんて休むべきだった。 目の前が涙で歪む。 ゆらゆら揺れる蜃気楼の中に佐倉さんが立っていて、……体が熱い。 すると、佐倉さんは差程驚いた様子もなく、静かに呟いた。 「やっぱり知ってたんだ……」 「放課後の教室で見たんだからね!」 今でも鮮やかに思い出される。 夕日のオレンジに染まった佐倉さんの後ろ姿。顔を重ねる要。 思い出したくないのに、ふとした瞬間に勝手に再生される。
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