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相沢くんにキスをされて、抵抗できなかったあたしに、佐倉さんを「最低」だと言う権利は無い。
「ごめんなさい……!朝奈さん……」
泣きながら謝る姿が、あの日の自分と重なる。
好きな人を想って涙を流す姿。
相手が好きで、ただ、それだけだったのに……――。
今のあたしは、要だけを想って泣くことなんか出来ない。
相沢くんが、心をノックする。
気付くと心の中に入ってきて、ざわざわと風が吹いて、乱れる。
クラクラする。体が熱くて、足元がおぼつかない。
「朝奈!」
目の前が、テレビの砂嵐みたいに見えて、微かな意識の中で蓮見くんの声が聞こえた。
あ、心配して来てくれたんだ。
なんだ……、やっぱり蓮見くんって結構いい人だったんだね。
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