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あたしがドアを開ける音で、その人物はこちらに目をやった。
「相沢くん……」
「朝奈……、もう具合は大丈夫なのか?」
『朝奈』。その呼び名に、胸がギュッと苦しくなる。
二人きりの時には、いつも『まゆり』だったのに。
名前を呼ばないでと言ったのは、あたし自身。それなのに、傷付くなんて、おかしい。
傷付く資格は無い。
「うん……」
「そっか、良かった」
ニコッと微笑む顔に、胸が痛くなるのを感じた。
ドキドキして、心臓が痛い。
ほら、また。
ざわざわ、ざわざわ……風が止まない。
「あ……相沢くんはこんな時間まで何してるの?」
「んー……、お前のこと待ってた」
「え……」
一段と大きく心臓が跳ねるのが分かった。
心臓が痛い。
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