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「あー!もう六時過ぎてる!早く帰ろ!あたしだって、要のこと待たせちゃってるんだから!」
「松本?どこで待ってんの?」
「多分自分の教室だと思う。いつもそこにいてもらってるから」
松本要(まつもと かなめ)。
この人が、あたしの彼氏。
要と付き合う前に、あたしは他の男子に恋をしていて、告白をした。
結果は、見事に玉砕。
その時に、たまたま要に見られてしまい、慰めてくれたのが切っ掛け。
通りかかる人は皆、泣いているあたしを見て見ぬふりをして通り過ぎていったのに、要だけは違った。
知らない人なのに、泣き止むまで隣にいてくれた。
髪を撫でてくれた手に、とても安心したことは今でも忘れない。
あの時から、ずっと身につけていた彼の黒い腕時計が、とても印象に残っている。
その手で撫でてくれたから、あたしの恋が始まったんだもん。
その話を相沢くんに話したとき、「そんな漫画みたいな展開ありえない」と、大笑いされたのを思い出す。
漫画みたいな展開では、相沢くんたちも負けてはいないと思うけど。
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