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「相沢くん?なに?どうしたの……」
相沢くんは少し考え込んだ後、パッと手を離し、軽く笑った。
「ごめん……、何でもない……」
おかしな態度のクラスメイトを不審に思いながらも、こんな時間まで待たせてしまった恋人の元へと足を急かした。
二組の教室の前まで来ると、遠かった話し声がよく届く。
要と佐倉さんの声。
その声を確認し、教室のドアに手を掛ける。
待たせちゃってごめんね。
このセリフを喉まで出しかかり、ドアに掛けた手をピタリと止めた。
教室の扉に付いた、小さくて透明な窓。
そこから二人の姿が見える。
腰まであるフワフワな髪の毛。
後ろ姿ですら可愛さがにじみ出ている。
そんな彼女の腰に、正面から腕を回す一人の男子。
二人の顔は重なり合って、見えない。
折れそうなくらいに細い腰に回る腕には、黒い腕時計。
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