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「むぅ~、仕方ないです、では連絡事項を伝えますね~。本日の予定は新入生同士の親睦を深める為、50分をクラス内で、10分の移動時間の後、多目的ホールでまた50分、学年全体の親睦会があります~。分かりましたか~?」
その言葉にも固い表情の生徒達を心配するが、交流の時間は限られている為、トーワはやむなく親睦会を始めた。
そして、その瞬間、教室内のほぼ全員が驚く事が起こった。
「もぅ~、なにツンツンしてるんですかぁ、セトさまぁ」
甘えた声でそう言って、未だ不機嫌そうなセトの後頭部から抱き付く少女が居たからだ。
「黙れ、離れろリリー」
「もぅ、素直じゃないですね~。私に抱き付かれて嬉しいくせにぃ~」
セトに邪険に扱われても笑顔で抱き付く少女の名はリリー・フォルテ。
褐色の肌に艶やかな黒髪、男を惑わす為に造られた様な妖艶な身体の持ち主はその身体を目一杯使ってセトに抱きついている。
「学園長に言われて気になってるんでしょ?…え~と、アキラくん?の事がぁ。だったら素直に言えば良いじゃないですかぁ」
それを言われた瞬間、セトはリリーを立ち上がり様に振り払い、無言で教室を出て行った。
「あ~ん、もぅ…、ゴメンねぇアキラくん。セト様意地っ張りだから許してあげてね?先生~、セト様連れ戻してきま~す」
まるで嵐の様な一連の出来事に呆然としていた光達だったが、リリーが教室を出て行った後に気を取り戻すと互いに顔を見合わせた。
「リリーさんが言ってた婚約者ってセトさんだったんですね」
「と言うよりあの言い方はあの男ツンデレと言うやつでは無かろうな?」
「つぅーか、学園長、光の兄貴が何か企んでねぇか?この状況はよ」
「どうでしょう?まだ彼について解らないので何とも言えませんし、兄も何を考えているのやら…」
「でもアキが巻き込まれるのよね?これって」
『巻き込まれる』その言葉に五人は一様に溜め息を付いた。
過去数回、光の兄である蒼士に敵対する者とのいざこざに巻き込まれた事がある五人はその記憶から面倒な事になると思ったのだ。
そして、それと同時に光は考えていた。
(この教室の状況はどう直しましょう)
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