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今、光に話しかけてきた女生徒の名はリン。
フェイの許嫁であり、幼少の時からフェイの隣で育ってきた幼なじみである。
「それにしても先程は大変な目にあってしまわれましたね?
とうとうリーダー確定ですね」
「あ~、ははっ」
少し時間が経過し、改めて自らの発言を、その結果を思い返すと苦笑いしか出てこなかった。
ワールドエッグの五人は中学時代からの仲間だが、他の四人の一般人からズレた感覚を止めている内にいつの間にか光がリーダーの様に扱われてきた。
発足を提唱したのも、この人員を集めたのもガイで、光はガイこそがリーダーだと思い、ずっと言い続けてきたのだ。
それがどうした事か、自らリーダーである事を認める発言を大勢の前でしてしまったのだ。
これはもう、笑うしかないだろう。
「でも、安心致しました」
本当に安堵したような表情で言うものだから、光はいったい何にそこまで安心したのかが気になった。
「すみません、何故そんなに安堵してらっしゃるんですか?リンさんが気に病む程の事は無かったと思うのですけど」
それを聞いてリンは微笑むと小さく頭を振った。
「フェイ様は光さんがワールドエッグに名を連ねるのを嫌っているからリーダーになりたがらないのだと思っておられた様でしたので、光さんがリーダーになられて私としても嬉しいのです」
そう言って優しい笑顔を浮かべるリンに光は少なからず罪悪感を抱いていた。
別に、名を連ねるのを嫌がっていた訳では無かったが、自分の態度一つで陰では心痛める相手が居たとは思わなかった事にすまないと思ったのだ。
それ故黙ってしまい、二の句が継げなくなり、光は一人気まずくなったが、幸いにもその場の空気を壊す様に大きな声が響いた。
「だぁー!!だから、炭酸は飲むなっつったろうが!!お前は炭酸で酔っぱらっちまうんだからよ!!」
「うっさいわよ、仕様がないじゃない?水だと思ったら炭酸入ってたんだもの。うぅ…熱い、脱ぎたい…」
「その癖は止めろ!!外に連れてってやるから待て!!」
「ぅん?ほら抱き上げなさい。急ぐのよ」
「っ~!!この酔いどれ脱ぎ魔ぁぁぁ!!」
遠ざかるガイの叫び声を聞きながら光は話題を変えられると思った。
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