~曇りのち曇り~

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その日を境に私は その人を恐れる様になった 厳密に言えば恐れに似た 感覚だ。 『みんなはどうしてるのだろう』 そう思った。それは自分だけでなく、親にみんなされていると思ったから。 私はその人を直視出来なくなっていた。 大きな声、時折九州の訛りが入る怒った声。 返事が小さい時の威嚇した表情。夕飯時母の膝に足を投げだし、食事中ずっと母の服に足先を入れ、胸を器用に摘む仕種。テレビの女性タレントに向ける卑猥な言葉… 全てが苦痛だった。 飼い猫がミルクを飲む姿をみんなで見ている時も 「こんな舌でアソコを舐められたらキモチよかろうなー!」と大声で言い、休日の真っ昼間から母を寝室に呼び、私達には入って来るなと怒鳴り、二人で入った寝室からは母の普段聞かない様な声が聞こえ、ベットがずっと軋んで居て、訳の解らない私は、母が痛い事をされていると思って居た。 そして、私はベットの傾きと足音で睡眠を邪魔される事がずっと続いて居た。
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