~曇りのち曇り~

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いきなりわが家に引越の話が持ち上がった。私は幼稚園の年中。ガソリンスタンドの仲間にいい物件があると聞き、車で2時間程掛かる街中のバイパス沿いに店が変わると言う事で私達はかなりの交通量の町に引越した。小さな二階建ての借家に移り、新しい生活が始まった。しばらくは新しい店の経営で、私に嫌な事もしてこなくなると強く願って居た。その願いも、あっけなく崩れ去った。急な事で幼稚園の制服も間に合わず、私服で通って居た私は、初日からイジメに合った。慣れない場所の店の経営で常に苛立つその人に皆気を遣った。帰宅するや否や玄関で犬の世話をしていた私を殴り付け「苛々してんのにうろちょろしやがって!」と言いまだ子犬だったマルチーズの頭を掴み、電子ピアノに数回叩き付けた。泡を吹いた為ヨダレと血で鍵盤は汚れた。犬は失禁しその人は「ちっ」と舌打ちし犬を床に叩きつけ、もらしやがった!と怒鳴り椅子を蹴り散らしながら手を洗いに行った。私は泣きながら犬を抱きしめ、犬は私の鼻血も混ざり血だらけになった。舌打ちを聞き、私は前の家で失禁した時に暗闇で聞いたのを思いだし恐怖と怒りで震えが来て、何かが胸の中でパチンと弾けた気がした。悪態をつきながらその人は私の前を通る時、邪魔だ!と威嚇の鬼の様な表情をし拳を振り上げた。私はとっさに睨み付け犬を抱きしめたまま、「ワンちゃんにするなら私をぶてば!」と泣き叫んだ。「何だてめえー!!」怒りの炎に油を注がれ鬼と化したその人は私を居間に引きずり、怒鳴りながら殴り蹴り上げ続けた。台所の母と目が合い、母に手を伸ばした瞬間悲しげな顔で私にくるりと背を向けた。私に馬乗りになり雄叫びを上げていたその人の手は私の首を絞めて居た。母の背中が遠ざかって見える、雄叫びが小さくなって行く。幼稚園から私を知るクラスメートにもイジメられて居たし、身体測定に見られた身体の傷や痣を笑われからかわれたし、もういいや疲れたな…と馬乗りになっている鬼に両手足で応戦していた力も限界を感じて居た。意識が遠退く。吐き気と痛みの中忘れ掛けて居た鬼にされた事が断片的に思い出された。私の乳首を暗闇でずっといじりながら、片手で私の下着に手を入れて性器を触り指を入れられた時の激痛と声も出ない恐ろしさ…。許さない、私がこのまま死んでも許さない、そう思いながら気を失った。
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