外れた歯車

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私は人の紹介で 自転車で⑳分程のホームセンターでアルバイトを始めた。 お花も扱う売場では 優しいお客さんも沢山居た。真冬も真夏も仕事はきつかったけれど、労いの言葉を掛けてくれるお年寄りや、自分の父親程の中年の方達は、自分の娘の様に、差し入れや優しい言葉を掛けてくれて、私は始めてこんなに長く続く仕事に巡り逢えた。そんなある日、帰ろうとした私に、常連の六十代位の人が声を掛けて来た。「おう、今帰りかい?」「今晩は!はい、今から帰るよ!」「そうか~、じゃ途中迄送るよ」「大丈夫だよ、そんな暗くないし」 そんな会話をしていると いきなり私の腕を掴み、 駐車場の窪みの暗がりに 引きずり込んだ。「もう、我慢出来ねえんだ、解るだろう?」「やめて下さい!大声出しますよ!」「いいじゃねえか、少しぐらい!」「やめてー!!」私は腕を捩り上げられブロック塀に押さえ付けられた。ガラガラとカートを回収する音に私の声は掻き消された。抵抗したけれど胸を触られ、右頬は舐められ、押し倒された。お年寄りと思っては居たけれど、男の力には敵わない。
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