第四章

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神社に着くと祠神はすでにいた。 「悪い、遅れた」 俺としては最速で来たつもりだったが待たせたのだから謝っておく。 「べつにいいわよ。まだ奴に動きはないし」 祠神が指差した先には、一匹の犬がいた。 しかし、犬のようで犬じゃない、そんな感じがした。 「感じたようね。あれがシェイドハイダーよ」 「この間みたいな子どもじゃないな」 「人型は珍しいのよ。知能もあるから人型は厄介なんだけど、あれは違うから心配は無用ね。貴方に実戦経験を積ませるにはちょうどいい相手ね」 こいつとんでもないことを言いやがる。 「ちょっと待て、俺はまだ札を緑に光らせることしか出来ないんだぞ。そんな奴にいきなり実戦なんて…」 「うるさいわね。安心しなさい。主に戦うのは私よ。貴方の仕事は私のサポート役」 「サポート役だって?」 「そ、貴方はこれを持ってて」 そう言って祠神は札を渡す。 「何だこりゃ?」 「それは貴方の璋力を私の璋力に還元する式札よ。貴方の璋力はどうやらかなりの量みたいだから私が使わせてもらうわ。それを持って茂みにでも隠れてて」 「この間使ったバリアは使えないのか?」 あれなら、隠れる必要もないと思うが。 「あれはあらゆるものを通さないのよ。攻撃はもちろん、その式札の効果もね」 「わかった、おとなしく茂みに隠れることにするよ」 「そうしなさい。さてと、じゃあ始めましょうか」 祠神は札を取出し、呪文を唱えだした。 どうやら結界を張るつもりらしい。 「取り出すのは一握りの空間。付属させるは璋の力を操る者。我が呼び掛けに応えて、不可侵領域を作りたまえ」 祠神がそう言うと、神社の境内が例の灰色の空間に包まれた。 正確に言うと、俺達が一緒に別の空間に移ったらしいのだが、そんな感覚はまるでない。 流石に結界を張ると、向こうもこちらに気付くらしく、俺達の方を見ている。 相手が動くより速く祠神は突っ込んでいった。 手にはいつの間に出したのか、身の丈ほどの剣が握られている。 その剣をまるで重さがないかのように、振り下ろす。 しかし、その攻撃はかわされた。 流石は犬型をしているだけはある。
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