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僕が耐えれたのは15分。
意味も無くかぶっていたキャップを目深に、君に声をかけた。
眼を半分隠したぐらいじゃ、君にすぐわかってしまう事ぐらい、ちゃんと理解出来ているのに。
少しでも君に、戸惑いしか表せていないだろう僕の眼を隠しておきたかったんだ。
『待ち合わせですか』
何て声かけていいかなんてわからなかった。
無理に問う気はなくて、ただ言葉を見つけれずに口から流れ出た。
それだけの言葉だったんだ。
『はい』
僕の顔を見て、一瞬だけ不思議な表情をみせると、後の言葉を知らない人のように微笑みながら君は続けた。
『でも、少し早すぎたみたいです』
…と。
『どのくらいですか…?』
僕の声は、自分でもわかるぐらいに震えていたのに、君は気付かないように答えた。
『4年…ぐらいかな』
そういい残して去っていく君を、どうして僕は追いかけなかったのだろう。
どうして抱き締めなかったのだろう。
君を抱き締めていたら、どんな風に未来が変わったのか。
先の事は誰にも予測なんて出来るわけがないと、皆はきっと口を揃えて言うだろう。
でも僕は、間違いなくこの日の事を忘れない。
後悔だけしかしなかった、1年目のクリスマス。
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