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思考をブッツリと断ち切られる程突然に、弾けるような歌声が聞こえた。
ケイタイの着信だ。
一瞬にして現実へと引き戻される。
……もう、11時か。
まだボーッとしたまま、ケイタイのディスプレイを見ると、アオイからの着信だった。
私は慌てて通話ボタンを押した。
「お疲れさん。もしかして遊びに出掛けてる?」
低めだけど少し中性的なアオイの声。
私は思い出を奥の方へ押しやると、その問いに答えた。
「いんにゃ。今日はおとなしく部屋にいるよ」
薄く笑った声が聞こえる。
私はさっきとはうって変わって、安心した気持ちになっていた。
「おとなしいとは珍しい。腹でも壊したか?」
「なっ! 女の子になんて事言うの!?」
「え?女の子だったの?」
茶化す発音が耳に心地よく響く。
「うっわぁ。ヒド~い」
「ごめん、ごめん。一応女の子だったよね」
「げ~っ、マジでヒドい! アオイのバカ!!」
ごめん、ごめん。と謝るアオイに、私の心は静かに落ち着いてきた。
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