吟遊詩人と少年

3/4
前へ
/57ページ
次へ
  あめのふるおとがきこえる。 でも、あめはボクをたたいてない。 ボクハイキテルノ……? ゆっくりとまぶたをひらく。 それだけなのに、すごくたいへんなさぎょうみたいだった。 ボクのめにとびこんできたのはいしだたみでも、くもりぞらでもなくて……みおぼえのない、きのてんじょう。 「ここ、は……どこ……?」 ひどくかすれててかぼそかったけど、どうにかこえはだせた。 どうせこたえなんてかえってこない。 そう、おもってたのに……。 「目が覚めたのですね。ここは街にある宿屋の一室ですよ」 へんじが、あった。 こえのするほうにかおをむけようとしたけど、うごかそうとしたとたん、またからだにいたみがはしった。 ボクがちいさくうめきごえをあげると、たぶんこえをかけてきたひとだとおもうおとこがちかづいてきて、ボクのしかいにはいった。 きれいなみどりと、あおと、みどりだった。 「暫く体は動かさない方が良いですよ。背中の傷は塞ぎましたが、まだ何ヵ所かは骨折したままですから」 はじめてかけられた、しんぱいそうなこえ。 なんでだろう。 すごく、なきたくなった。 いままでいちどもないたことなんてなかったのに……。 そのおとこのひとはおだやかにほほえむと、ボクのあたまをなでてくれた。 「ふ……ぅ、ぁ……っ」 はじめてながしたなみだは、しょっぱかった。
/57ページ

最初のコメントを投稿しよう!

199人が本棚に入れています
本棚に追加