吟遊詩人と少年

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  きづいたら、ボクはねてたらしい。 まだあめのおとがきこえるけど、そとはくらい。 ボクのそばではあのおとこのひとがべっとにもたれかかるみたいにしてすわってた。 「ねて、る……」 ボクはどうしたらいいんだろ。 たぶん、ボクがべっとをつかってるからこのおとこのひとはすわってねてる。 「ん…どうか致しましたか?」 「ごめな、さ…」 「?何故貴方が謝るのです?」 だって、ボクがばしょとっちゃったから… そういうと、おとこのひとはまたやわらかいえみをうかべた。 「わたしが勝手にしていることなのですから、貴方が気にすることではないですよ。こうして寝るのも慣れていますしね」 「?」 「わたし、旅人なんですよ。野宿も致しますから、慣れなくてはやっていけません」 たびびと……。 「……貴方も、一緒に来ますか?」 「え……?」 ボクも、いっしょ……?なんで? なんでこのおとこのひとはボクにあたたかいことばばかりをかけてくれるの? 「さぁ、何故でしょうね。わたしにもよく分かりません。もしかしたら……何かの運命なのかもしれませんね」 あぁ、もしかしたら。 ボクがあのおとこにきられたのは、このひとにあうためだったのかもしれない。 「どうします?わたしと共に来ますか?」 「いかせて、ください…ボクも、いきたい」 「では暫くは体を癒すことに専念して下さいね。暫くはここに滞在するつもりですし。……あぁ、忘れてました。わたしの名は――――」 きづいたら、あめのおとはきこえなくなってた。  
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