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「僕が殺せと言ったんだ、殺せ。」
「しかしっ…」
騎士は顔を上げてユルユルと首を横に振った。
青年はその表情を楽しむ様に唇を歪まし、微笑む。
「ゼオリス、いつまでも優しさなど持ち合わせちゃいけないと言わなかったかい?それが命取りになるんだよ?」
玉座から腰を浮かばせ、王は携えていた剣を引き抜く。
騎士達の標準装備の剣とは似ても似つかない程、鞘や柄に金銀宝石が使われている。
見るからに飾りの剣である。
「君達は僕に忠誠を誓った。…なら僕の命令は絶対だろう?」
薄く微笑む王。
美しく整った顔も冷笑を引き立てるだけでなんの意味も介さない。
「オルタイルを根絶やしにして周囲の村の者達に恐怖心を植え付けてこい」
「…出来ません」
ひたりと首筋に王の剣が宛がわれた騎士は尚も首を振った。
元から切れない剣は肌を切ることさえ出来ない。
王は微笑んだ。
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