プロローグ×所謂、全ての始まり

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本を読んだ。 別にそれだけならなんて事はない。 ボクだって漫画くらいは読むし、小学校の頃に国語の教科書を音読したこともある。 その本だって、別に他と変わったところのある訳じゃない、友人に薦められた普通の本だった。 ただ、少しだけ…… ほんの少しだけ、感動したのだ。 …… 嘘をついた。 訂正しよう。 ボクはその本を――その物語を読み終えたあと、流れ出す涙を止めるのに少々以上の時間を要した。 ただの文字の羅列が、これほどまでに人の心を揺さぶるものなのかと。 こんなものを人が創り出せるのかと。 内容に感動すると同程度の比重で、ボクはそこに感動していた。 そして、ふと―― 本当になんの脈絡も無く、なんの足掛かりも無く、なんの不自然も無く―― ボクも、書いてみたいと思ったのだ。 思い立ったが吉日をモットーとするボクは、さっそく大学ノートを買ってきた。 ペンをとり、さてどんな物語を綴ろうかと思案する。 あの本はフィクションの感動物だった。 だったら……そうだ――恋物語がいい。 極上の、甘く切ない物語にしよう。
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