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支払いを済ませてカフェを出た私は、足を大学へと向けた。
目指すは幾つものサークルが軒を連ねている旧館。
もっとも、私は何かのサークルに所属しているわけじゃない。
所属しているのはたまたま知り合った先輩で、今日はヤツとの約束があるのだ。
私が遅れて怒るようなヤツではないけれど(もしかしたら喜ぶかもしれない)、私から誘った手前、遅れるわけにはいかない。
楽器の音やら笑い声やら叫び声やらで騒がしい廊下をずんずんと進み、目的の扉の前に立つ。
「先輩、入りますよ」
言いながらノックする。
返事が返って来る前に扉を開ける。
何度かこの部屋を訪れたことはあるが、中から何らかの返事があったことはない。
部屋の中には何だかよく解らない部品や工具類がそこかしこに転がっていた。
その奥、扉がある側と反対の壁にある作業机に、先輩はいた。
こちらに背を向けて、一心不乱に何かを創っている。
私は床に散らばったガラクタ(そう言うと先輩は怒る)を踏まないよいにして先輩に近付く。
「先輩」
「……」
「せ・ん・ぱ・い」
「…………」
「……」
「ふぎっ!?」
頭を叩いた。
パシンと良い音がした。
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