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 今は水の音を聞くだけで、胸の奥が冷えていく感覚に襲われる。自分を突き放した水が奏でる音だ。だから、雨音すらも胸を刺す。今こうして閉ざされた室内で、雨の音が届かなくて本当に良かった。 そんな心の中のわだかまりを、もしかしたら名付け親は見抜いていたのかもしれない。自分が無理して笑うことを、気遣ってくれたのかもしれない。  今日は一日休みなんですよ。と、まるでこっそりと今日のおやつを教えてくれるみたいに簡単に、彼はそう言って片目を瞑った。その言葉に、自分は両目を忙しく瞬かせ、まるでご褒美みたいなそのプレゼントを必死に受け止めようとしたんだ。 「モーリアに怒られたりしていないか?ユーティリスの雛が増えてたり、あぁ、書類山積みになってるんだよな?大丈夫なのか?シリクス、もしかして俺の代わりに怒られてるんじゃ…。どうしよぅセフィム」
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