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「だってそうだろ?俺、誰にも言わずに来たつもりなんだけど…。どうしてここが分かったんだ?」
行き先も帰る時間も告げず、まるでふらりと家出をするみたいに城の自室を出たのは、朝のトレーニングが終わってすぐのことだった。
「あ、もしかしてやっぱり監視とかされてる訳?王様に何かあったら大変だからって、なんだかんだ言って誰か見張りがついてるとか?」
だとしたら、どれだけがっかりするだろう。どんなに今日は特別だと言われても、本当は一人になれる場所などこの敷地の中にはないのかもしれない。
しかし、セフィムから返ってきた言葉は意外にもノーだった。
「今日は何もかも忘れるんだろう?そう言ったんだ、誰もお前の後などつけていない」
じゃあなんでという言葉が出る前に、いつの間にか傍らの椅子に腰を下ろしていたセフィムが答えを教えてくれた。
しかし、それは言葉ではなく、彼のすらりと伸びた指先だった。彼の右手の人差し指が、扉の外を指し、そしてトーマの足元を指す。
「あ!」
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