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 きっかけは、こうして今ついたようは、自分の大きなため息をだったのだと思う。「大丈夫ですか?」と主語も言わず、そう問いながら顔を近づけた人物は、どうとも取れない様な複雑な表情を浮かべた。  彼はよく、そうやって繰り返し同じ質問をする。決まってその問いが短いのは、そう尋ねた彼自身もまた、答えを貰うことにどこか戸惑いを感じているからなのかもしれない。そうして、自分が大丈夫だと誤魔化す度に、より一層深刻な顔をするのだ。  こんなやり取りをするのはいつも、この世界での滞在期間が普段より長くなった時だ。 「シリクス、どうしてる?」  通路を挟み、向かい合う様に座り込みながら、前髪の雨粒を払うセフィムにそっと尋ねる。不意にそんな質問が零れたのは、シリクスの浮かべた曖昧な表情が今思い出されているからだ。 「どうしてるとはどういう意味だ。いつもと変わらないだろ」 「うん、そうなんだけどさ」  次兄に関することには、セフィムの答えはいつも素っ気ない。それでも気になってしまう。この突然の休日をプレゼントしてくれたのは、他でもない、シリクス自身だった。
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