ヤクソク

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 それからしばらく経ったある日、ふたりには再会のときが訪れた。日曜の午後、彼女は少しどきどきしながら例の杉の木のほうへ向かって歩いていた。  下を気にしながら河原沿いを歩いていたとき、風に乗って彼の歌声が聴こえてきた。  彼女は思わず早足で土手を下りていった。木の下まで行くと、彼も彼女に気づいたのか、歌うのをやめ、少し眩しそうに目を細めながら彼女を見上げた。やわらかい風がふたりの髪をなびかせた。  もう一度、あの歌声の主に逢ったのはいいが、なんて言えばいいのか分からず、彼女はただお辞儀をするのだった。
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