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「何すんだよ?」
誰かに頭を殴られた洋介は、座ったまま頭を抱え、殴った相手を睨み付ける。
「“何すんだよ”じゃないでしょ?他のお客様もいるんだから、さっさと片付けなさい!」
「俺様に指図すんな!」
「バイトの分際で、何言ってんの!」
小柄でふんわりと巻かれた栗色の髪を束ね、眉を吊り上げカンカンに怒っている女の店員。
左胸に“佐倉”と書かれたネームを付け、左の薬指にはキラキラと光るリングがはまっている。
「佐倉(サクラ)さん!ちょっと来て下さい!」
「あっ…はい!」
厨房から呼ばれた佐倉は「ちゃんとそこ片付けるのよ!森谷君!」そう言って、厨房に早足で向かって行った。
「何だよ!あのババア。俺様に指図しやがって」
洋介は佐倉に言われた事を無視し、女達が座っているテーブルの椅子にドカッと腰掛けた。
「洋介ー!あんた、ずっと俺様だったらバイトなんか務まんないよー」
一人の女が洋介の肩にもたれかかり、ニコニコしている。
「お前ら暇人だな…どっかに遊びに行って来いよ」
洋介は「はぁ」と溜め息を付き、女達を見る。
「洋介もバイト終わったら遊んでくれるー?」
「遊んでやるから、さっさと帰れ」
女達にこれ以上何言っても無駄だと思った洋介は、そう言い女達を追い払った。
「じゃあ、いつものとこで待ってるからねー」
嬉しそうに帰っていく女達。
洋介は後ろ姿を見る事もせず、ただ椅子に座ったままだった。
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