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次の日。
私は、予定より早く、先輩に会うことが出来た。
「西村」
2時間目の移動教室の帰り、後ろから誰かが友達と話している私を呼んだ。
その声の方へ振り向くと、そこには先輩の姿。
「谷先輩っ」
私は、小走りで先輩に駆け寄る。
「よぉ。移動だったのか?」
「はいっ…先輩は?」
「俺、今来たとこ。寝坊しちまってさ」
「あはは。ダメじゃないですかー」
「うっせーよ」
そんな他愛もない会話をしていると、一緒に居た友達が、先に戻っとくね、と行ってしまった。
授業に遅れるワケにもいかないから、先輩に一言言って、私も戻ろうとする。
と、
「あ、そうだ。西村、お前、今紙切れ持ってねぇ?」
不意に、先輩がそう言った。
「ルーズリーフならありますけど…」
「一枚ちょーだい」
「どうぞ」
言われた通りに一枚渡すと、先輩は書くもんも、と言ってきた。
また、どうぞ、とシャーペンを渡すと、先輩はルーズリーフに何かを書き出す。
その様子を見ながら、クールな雰囲気の先輩には、水玉模様のシャーペンは似合わないな、何て思って、心の中で笑った。
決して本人には言えないけれど。
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