出会いをひとつ

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『…う…あ…』 土砂降りの雨の中、顔を押さえてうずくまる一人の男。 『ふふふ…』 その前には何かを大切そうに抱えている男。 うずくまっている男より、僅かに年上に見える。 『これであの子は助かる…』 狂気じみた瞳はどこか遠くを見ていた。 慈しむように笑い、何かを撫でる。 『ああ、急がなきゃ』 ゆっくりと足を進める。 『…ま…て…』 うずくまっていた男が顔を上げる。 『…今行くから』 しかし男はそれに見向きもしない。 『…うぐ』 顔中、激しい痛みに襲われながら手を伸ばす。 ビ… 何かを掴んで倒れる。 手には布の切れ端。 男は靄に飲み込まれていく。 薄れゆく意識の中、男の目に映ったのは、右の二の腕に彫られたクロアゲハの刺青と、相手に奪われた自分のカオだった…。 .
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