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仮に、この少女の耳と尻尾が何らかのファッションだとしても、それならなぜこんなことをしようとしているのかわからない。
少女が自分に向かって言った、「ただの人間」という言葉の真意も理解できない。
「……あんた……」
吉人がオーバーヒート寸前の頭で思考をめぐらしていると、そんな低い声が少女の口から聞こえた。
「今、なんて言おうとした? もう一度、はっきり、言ってみなさいよ……」
少女は鬼の形相で、肩も腕も拳も震わせながら言った。
錯覚のせいか、猫の耳が鬼の角のように見える。
尻尾も怒りを表すように後ろで強くうねっていた。
吉人はその姿に恐怖を覚えたが、答えようと口を開いた。
「だから、お前も人間なんじゃ……」
その言葉は最後まで言うことができなかった。
というより、止められた。
少女が吉人の頬をいきなり殴ったのだ。
しかもグーで思いっきり。
運が悪く、吉人は背後にあった近くの木に後頭部を打ちつけ、声も上げずに意識を失った。
はっきり言って、かなり格好悪かった。
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