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少女のほうは、攻撃が吉人に通用しないとわかったようで、握っていた拳を下ろした。
だが、それに安堵したのも束の間。
代わりとばかりに飛んできた蹴りをかわしきれず、吉人は腹を抱えてうずくまる羽目になった。
「いくら言ってもわかんないみたいね。じゃあはっきり言うわ」
吉人が痛みを抑えながら見上げると、少女が大きく息を吸うところだった。
「わたしは、猫族の獣人(じゅうじん)なの!!」
キーーーーー……ン
……大声なら、わざわざ耳元で叫ばなくても……。
頭がくらくらして結局よくはわからなかった。
―――――――
大地、空気、水、すべての物質がせめぎ合う、《混沌の世界》で、
まだ、人間も動物も、植物や微生物さえもいなかった頃の話。
そこには一つの光が揺らめいていたらしい。
らしい、というのはあくまで神話による伝説で、確かめようがないためだ。
その光は次第に大きくなり、ある時それは『命』となった。
その『命』は混沌の中で、形作られた身体を使って世界を作り始めた。
翼は風を起こして空を。
足は土を踏み固めて大地を。
口から吐く炎で太陽を。
光に照らされる瞳で月を。
その瞳から零れる滴で水を。
『命』はそうやってこの世界を創造した。
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