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だが、かろうじてアルフヘイムに残った動物たちは、人間と同等の知能と感情を持つ獣人にまで進化し、少しずつ世界を元の状態に戻していった。
しかし、それで人間の悪影響がなくなったわけではなかった。
ミッドガルドでの人間の感情は、鉱石を使っても奇跡が起きない。
これは人間の唯一の誤算だった。
そしてその具現化されない強い感情は、二つの世界の境界を越え、怪物としてアルフヘイムの獣人を襲うのだ。
獣人やこの世界にとって、人間はまさに悪の象徴となっていた。
―――――――
「だから、あんたみたいな人間はこの世界でもっとも許されない存在なの」
長々と世界の説明をしてくれた少女はこう締めくくった。
黙って聞いていた吉人だったが、当然納得いくような話ではなかった。
「進化論はどうなるんだよ? 一億年前に生きてた恐竜の存在は?」
「何よそれ。知らないわよ、人間の都合のいい事情なんか」
「なんで獣人が知ってて、俺たち人間は知らないんだよ」
「語り継いでいくのに限界がきたんじゃないの? 八千年以上前のことだしね」
人間を含む動物にはしっかり進化の過程というものがあって、それがたった今、この少女に覆されたなんて信じられない。
いや、信じるかどうかはもうどうでもいい。
ここにいてはいけないと言うのなら、吉人がすることは一つ。
家族のところに帰るだけだ。
吉人は疲れたようにゆっくりと腰を上げた。
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