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ちょっとした肉食恐竜のような大きさで、筋肉隆々(りゅうりゅう)の身体はいかにも重そうなのに、追ってくるスピードは尋常じゃない。
ここが木の密集地帯でなかったら、とっくに追いつかれているところだ。
「もっと速く走って!」
「これでも精一杯だ! ていうかどこに行くんだよ!?」
吉人は運動が得意なほうだが、全力ダッシュで長くもつはずがない。
後ろの吉人を確認しながら、少女は力強く叫ぶように言う。
「わたしの学院寮! こいつもそこまでは追ってこれないし、あんたを獣人の街に行かせるよりははるかにマシ!」
少女も疲れ始めたのか、そう叫んでからは息が乱れてきた。
怪物は立ち並ぶ木を避けながら進んでいるため、ギリギリ吉人たちに追いついていない。
ところが、その障害となってくれる木々が視界から消えた。
吉人たちは森を抜けてしまったのだ。
目の前は崖でその下には川、そして対岸に渡された木の橋が一つあるだけ。
直線距離をかけっこすれば明らかに怪物が勝る。
どれだけ急いでも、橋を渡っている間に追いつかれてしまう。
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